高校物理概論(上)
1、高校物理の物理学上の位置
物理学は数学を媒介としながら、その上に着実に積みあがってきた学問です。従って学生がそれを学ぶ際は人類の物理学の発展の歴史を追う形になります。高校物理はニュートン(「ニュートン力学」、ここで言う「力学」の祖)の生きた17世紀からアインシュタイン(ex.「相対性理論」)直前の19世紀までが主な範囲です。この範囲は、そこで必要とする数学も高校数学の範囲に収まっているものが多く、理解しやすいと言えるでしょう。
ここでは高校物理の各分野の各公式のうち核となるものの背景を紹介しておきます。
A)力学
物理の一番基礎的な部分で、17世紀に天体の運動との関連からニュートンが運動方程式を導いたことが端緒となっています。さらには運動方程式の積分によって、運動量保存則、エネルギー保存則などの重要な法則が立式されます。*ちなみに積分を用いる方法は高校課程では習いません。
結局、単振動であろうと惑星の運動であろうと基本は運動方程式、エネルギー保存則、運動量保存則に帰着し、そこに物理学の本質があると言えます。
B)熱力学
熱力学はエネルギーの本質に迫る重要な学問ですが、高校の範囲であまり深く触れることはできません。従って状態方程式、エネルギー保存則、熱力学第1法則をしっかりと理解して将来の学習に備えることが一番の近道です。
C)波動
三角関数が苦手な人にはとっつきにくい分野かもしれません。しかし、光が波動であること、あるいは全ての原子が本質的には波動性を持つことを考えると、やはり避けては通れない分野です。
公式として重要なのは波動の一般式(v=fλ ,f=1/T )と干渉条件を表す式で、その他はそこから導出可能なものです。そういう観点から各公式を捉えると理解の助けになるでしょう。また、うなりの式やドップラー効果の式は間違えて覚えがちなのでしっかり確認しておく必要があります。
D)電磁気
学問としては物理学の中で一番完成されている分野です。
マクスウェルの方程式を理解する手助けとしてクーロンの法則、アンペールの法則、ファラデーの法則を理解しておくことは非常に重要です。正負の向きを間違いやすいので符号を含めて確実に覚える必要があります。他の公式は全てこれらから間接的に生み出されるものですが、回路関連の公式は独立した一分野として確立されているので一通り触れておくこと。
また、力学を前提とすることが多いので、事前に習得しておくことが肝要です。
E)原子物理
歴史的に新しい分野(ex. 量子力学)でもあり、これまでの4つの分野が全て関連してくる学問です。しかし高校生のうちに突っ込んだ議論をする機会はあまりなく、大学によって入試の出題範囲から外すところもあります。
(下)につづく