2025年度共通テスト変更点(その1「社会」)
2025年度(現中3生受験時)より、指導要領改訂に伴い共通テストでの科目割が変わります。いま最も話題なのが「情報」という教科・科目が必修として追加されるということですが、一旦それはさて置き、科目ごとに現時点でわかる範囲で記していきます。
まずは社会について。
現行の「地理歴史」と「公民」という教科の枠組みは変わりません。しかし科目が大きく変わります。
<地理歴史>
変更後の科目名 | 分類 | 現行科目 |
歴史総合 | 必修 | 世界史Aと日本史A |
世界史研究 | 選択 | 世界史B |
日本史研究 | 選択 | 日本史B |
地理総合 | 必修 | 地理A |
地理探究 | 選択 | 地理B |
まず地歴について上記のように変わります。「歴史総合」と「地理総合」が基本科目のような扱いになり、実質高校1年次での必修科目になります。そして「○○探究」というのがより専門的な科目で選択扱いになるということです。ここで厄介なのは、「歴史総合」が世界史Aと日本史Aの両方の要素・範囲を含むということ。ここで一旦その内容について確認をしておきます。
「歴史総合」・・・日本史・世界史の近現代の範囲を中心に扱い、歴史の学習方法も学ぶ。具体的には、資料の読み取りや多面的・多角的な評価や論証、さらにはグローバルな視点から世界と日本、あるいは諸地域間のつながりを知る、このような感じです(この文章は私の個人的な解釈です)。
問題はこれが必修化されるということで、入試科目として(少なくとも共通テストの入試科目として)、
パターンA=歴史総合+日本史探求
パターンB=歴史総合+世界史探究
というように、世界史だけや日本史だけの知識でのテストではなくなるということです。たとえば日本史選択の場合でも共通テストでは「歴史総合」の範囲として世界史の近現代史について基礎的な学習が必要となります。
一方、地理については
パターンC=地理総合+地理探究
というように地理を単独で深掘りしていけばよいのでそれほど負担増にはならないと考えられます。
ちなみに大学ごとに入試科目(2025年度以降)はまだ発表されていませんが、たとえば東大の文系学部の場合、従来2次試験で日本史・世界史・地理から2科目を選択します。それを前提に考えると、たとえば日本史と地理を選択した場合、共通テストで「歴史総合」があるために日本史と地理に加えて世界史の近現代史を学ぶ必要が出てくる一方、世界史と日本史を選択した場合は、必須として「歴史総合」、選択として「日本史探求」と「世界史探究」を学べばよいので、純粋に2科目分の学習でよいということになります。
<公民>
変更後の科目名 | 分類 | 現行科目 |
公共 | 必修 | 現代社会 |
倫理 | 選択 | 倫理 |
政治・経済 | 選択 | 政治・経済 |
次は公民について。まず現行の「現代社会」が「公共」という科目名に変わります。さらに共通テストの科目としての「倫理・政経」(4単位科目)はなくなる方向のようです。上記3科目は従来通りすべて2単位科目ということになります。
ただし共通テストにおいて「公共」が必修科目となるため、実質的には
パターンA=公共+倫理
パターンB=公共+政経
このいずれかの組み合わせを選ぶことになり、現行でいうところの「現代社会」の範囲は必修となるわけです。ちなみに「現代社会」は、「倫理」および「政治・経済」などを含めて幅広く公民分野を扱っています。すなわち、倫理選択にしても政経選択にしても、ある程度他の公民の分野についても基礎的な知識を学ぶ必要があるということです。
<2025年度大学入学共通テストの科目割>
最後に大学入学共通テストの科目割(地理歴史・公民)について整理しておきます。
1 | 地理総合+地理探究 |
2 | 歴史総合+日本史探求 |
3 | 歴史総合+世界史探究 |
4 | 地理総合・歴史総合・公共から2科目選択 |
5 | 公共+倫理 |
6 | 公共+政治・経済 |
以上の6パターンの予定です。文系にしても理系にしても上記から1科目ないし2科目を選択することになります。あくまで予想ですが、国公立大理系志望で共通テストで社会1科目選択の場合、「1」(=地理)、そうでない場合は、「5」(公民+倫理)か「6」(公民+政経)のいずれかを選ぶような気がします。これまでは理系でも日本史選択がそれなりにいましたが、理系で「2」の選択はほぼないかなと思います。
文系で2次試験が共通テストで社会1科目でよい場合は、たとえば「3」(=世界史)と「1」(=地理)、が有力(もちろん「2」もいると思います)で、「4」から「歴史総合」+「地理総合」か「公共」+「地理総合」のいずれかの選択が有力だと思います。
いずれにしても現行とは大きく変わりそうです。大学ごとの入試科目については発表もこれからになりますが、まだまだ注視が必要です。