2025年度大学入学共通テストの内容および変更点&浪人生対象経過措置&科目別の対策方法
2025年度から新しい大学入学共通テストがはじまります。その変更点、いろいろと気になるところだと思います。一方で、既卒生・高卒生にとっては去年までとどう異なるのか、また、経過措置がどういった形で用意されているのかも気になるところだと思います。そのあたりの変更点などを詳しく解説していくとともに、それぞれの科目の対策方法についても解説していきます。
まず、共通テストはクリアさえできれば美味しいぞというところから話をしていきます。
特に国公立志望者にとっては、当然ながら2次試験へのアドバンテージになります。また私大入試でも、共通テスト利用型、いわゆる併用型の独自試験の際にアドバンテージになりますし、資格を獲得できるというメリットがあります。そしてさらに、私大共通テスト利用入試、いわゆる単独利用型であれば、試験を受けずに合格をもらえるので労力と時間が節約でき、保険や精神安定剤にもなります。また最近では、国公立大の総合選抜あるいは推薦入試で共通テストが使われる場合がありますので、美味しいぞということになっています。
一方で、共通テストは簡単ではないといった面もあります。平均点でいうと、昨年2024年度文系5教科型で536点ですので、平均得点率としては59.5%で6割を切っています。理系5教科型では559点、こちらは6割強、62.1%です。
つまり共通テストは、国公立受験者であっても全科目平均的に6割前後の点しか取れない、それ位の難易度になるわけです。センター試験から共通テストに変わって、より思考力が問われるようになり文章読解力・スピードが要求される傾向が強くなっている、そういった側面は確かにあるわけですが、
実は、共通テストは対策しやすいですよ、ということも言っておきたいと思います。
というのも、基本的にはこれはセンター試験時代からそうですが、毎年ほぼ同じような傾向で出題されるという、傾向と対策がしやすいという面があります。過去問然り各出版社からの対策本・参考書、そういったものがたくさん発売されていますので、そういったものをうまく活用することで対策がしやすいのかなと思います。ただ一つ、今回は2025年度新共通テストに変わるわけです。ここが問題になります。
では、2025年度新共通テストの変更点と経過措置について解説していきます。
英語リーディングは、試験時間80分で変わりません。ただし大問6題が、8題に増える可能性があります。
国語は、試験時間が80分から90分に増えます。そして従来の大問4題(現代文2題・古文1題・漢文1題)が、現代文が1題追加になることによって、大問5題の構成に変更となります。
数ⅠAは、試験時間70分で変わりませんが、従来の選択問題方式(3題の中から2題選ぶ)から選択問題がなくなり必答になります。実質整数の問題がなくなることになります。
数ⅡBCは、まず科目名が変わっています。試験時間60分から70分に変更、大問4題の構成が5題の構成に変わります。選択問題が増えることになります。
また、数学に関しては、浪人生・既卒生を対象に経過措置が用意されています。
地歴公民は、それぞれの科目60分の試験というところは変わりませんが、科目名および出題範囲が大きく変わります。後程詳細は解説しますが、こちらも経過措置が用意されています。
理科は、ほとんど変わりはありません。それぞれの科目の出題範囲が新課程に変わる程度です。
情報は、今回新たに設けられた科目になります。ただし情報に関しても、経過措置として旧課程いわゆる旧情報での受験が可能になります。
さて、ここから「共通テストで失敗しない方法」ということで対策について話を移します。
まずは全体から話をしていくと、
1つ目は、共通テストを軽く見ないこと。共通テストは、2次試験一般試験とは全くの別物。独自の出題傾向をもっていますので、独自の対策が必要です。
2つ目は、科目によっては早めに問題演習に取り組むこと。特に、数学・国語・英語、この辺りは早めに、具体的には高校3年生の春ぐらいから少しづつ対策を始めることをお勧めします。そうすることで基礎力養成にもなりますし、スピード向上にもつながります。
3つ目は、共通テスト模試を定期的に受けること。そうすることで実戦的な練習にもなりますし、模擬試験の前の準備や後の復習も有意義になります。ぜひ共通テスト模試を定期的に受けてください。
次に、科目別の変更点および対策の話に移ります。数学は、数ⅠAに関しては、先ほども書いた通り、選択問題からどうやら整数が削除されるようです。よって、数Aの3題から2題選択というのが実質2題必答問題に変更になります。さらに数ⅡBCに関しては、大きく変わります。旧課程と新課程の表は以下のようになります。
数Bのベクトルが数Cに移動、それから数Ⅲにあった式と曲線・複素数平面が1つになって数Cに移動になります。もともと数Ⅲは共通テストの範囲外なのでこちらはおいておいて、数B数Cが合計4単元になります。この4単元4項目から3項目を選択解答することになります。選択の仕方は自由ですが、おそらく文系の場合は、数列・統計・ベクトル、理系の場合は、数列・ベクトル・平面上の曲線と複素数平面、という選択になるケースが多くなると思われます。また、懸念点として試験時間が60分から70分に増えますが、大問が実質1つ増えるということになりますので、試験時間70分で間に合うのかどうか、そこが気になるところです。
対策としては、共通テストは、マーク式かつ誘導形式、さらに共通テストになってからは、文章読解・情報処理能力をさらに要求される傾向にあります。しかし、まずはセンター試験レベルの問題を解けるようにすることが当面の目標になります。センター試験は1990年から実施されているのでその辺りから過去問として存在しているわけですが、例えば東進の過去問データベースに行くと1995年分から掲載されています。現行の共通テストに近い数ⅠA・数ⅡBというくくりは1997年(もっとも現行に近いのは2015年)からはじまっていますので、その辺りから少しずつ過去問として時間を決めて解いていくことが可能です。あるいは市販の共通テスト単元別問題集といったあたりから解き始めるのでも良いと思います。ある程度基礎が大丈夫かつ苦手単元もさほど気にならない程度になったら、過去問を丸ごと時間を測って解いたり、各社の共通テスト模試の過去問を解いても良いと思います。いずれにしても、早い段階からセンターや共通テスト型の問題を使って、素早く正確に解く練習を始めることをお勧めします。これによって計算力や解くスピードの向上が見込めます。
また、高卒生・既卒生対象に経過措置が用意されており、旧課程の選択ができます。ただ、1つ注意点としては、数ⅡBの試験時間も60分ではなく70分に試験時間が延長されます。なので、問題量が増える可能性があり、これまでのボリューム感で予想しているとちょっと危ないかもしれません。
国語は、新テストの試験時間が90分に増えて、大問も5題に増えます。内訳としては、現代文が2題から3題に増えます。増えるのは所謂資料読解といわれるもので、配点もこのように変わります。資料読解の試作問題を見てみると、読解力というよりは、情報処理能力に近いものを要求しているように見えます。実際のところ、よほど苦手な人でなければ苦戦することはないのかな、と思います。また配点が200点分の20点なのでさほどの影響はないかなと思っています。ただ一方で、時間がきつくなるのではないかという印象です。単純計算だと資料読解は10分ということになりますが、おそらく他の問題にしわ寄せが行く可能性があって、全体的にスピードアップ、そして集中力の維持が求められそうです。解く順番としては、資料読解を最後に回すのが得策かなと思います。
対策としては、やはりセンター試験。1990年からやっていってもいいですし、例えば東進のデータベースであれば1995年分から掲載されていますので、その辺りから早い時期から少しずつ取り組んでいくのが良いです。特にセンター試験の国語については、現代文、古文・漢文共に良問が多いので、2次試験・一般試験の対策としても有意義です。あと、国公立志望の方は、古文漢文で足をすくわれないように対策・取り掛かりがあまり遅くならないように意識しておく必要があります。
英語は、近年語数が増える一方で2024年度もその傾向がより強くなりました。
対策は、とにかくリーディングの場合は読解力、特に速読力および素早く設問に対処すること、着眼点の養成や慣れの問題も大きいと思います。ただ1つ注意点としては、あまり速読ばかりを意識して適当な読みに終始しないように、そうすると逆に点数が伸び悩むことになります。特に下線部や選択肢をしっかり読めるような精読力も併せてつけておく必要があります。
また、英語は新課程ということになっていますが、内容的には何か変わるということはありません。ただし、試作問題、モニター調査、というものが行われていて、読解中心というのは変わりませんが、下の表のように、大問6題構成から8題構成に変わる可能性があります。試作問題は、読解中心なのは変わらないのですが、具体的に言うと、文挿入や下線部の言い換え、また意見や表・グラフの読み取り問題など、以前のセンター試験に少し類似した問題が含まれています。そういう意味では、2010年代のセンター試験の過去問も部分的に活用する、といったやり方もあると思います。
一方、リスニング問題も大きくは変わりませんが、試作問題が公表されてます。その部分に関しては、一部変更があるかもしれませんが、さほど大きな変更はなさそうです。
対策としては、これこそ一朝一夕、付け焼刃ではどうにもならないので、特に苦手意識のある人は日々コツコツ、リスニング学習や音読などを取り入れましょう。また、模擬試験を受けた後などにしっかり復習して、分析・対策の検討を行うようにしてください。
理科は、試作問題がありませんが、新課程旧課程で多少内容の違いがあります。特に化学・生物に関しては結構に内容が異なる部分がありますので、それぞれ自分の選んだ課程について出題範囲を確認しておく必要があります。
対策としては、しかるべきタイミングで、過去問演習や類似問題演習を行うことが必要です。特に、化学・生物については物理に比べると早めに問題演習あるいは過去問演習に取り組む方が良いと思います。そうすることで知識の定着の確認になります。また、理科基礎については、それぞれ範囲がさほど広くないので、慌てて対策する必要はないと思いますが、ただ一方で、早目に問題演習することで、知識の確認も兼ねるというやり方もあると思います。
地歴公民は、科目名からして大きく変わります。共通テストの科目の組み合わせは以下の表のようになります。
画像を変えて説明するとこのようになります。 いわゆる基礎科目、歴史総合・地理総合・公共から2科目選択という組み合わせも可能です。ただし、この基礎科目から2科目選択というのは、大学によっては、特に難関大学については、認めていないというところも多いようです。
さて試作問題の概要を科目ごとに詳しく見ていきましょう。まず、表左側の歴史総合、日本史探求から、大問構成でいうと最初の第1問が歴史総合からの出題になっています。歴史総合というのは近現代の日本史・世界史にまたがった範囲で、思考を伴うような出題を主旨とする科目になります。
表右側の歴史総合、世界史探求も第1問は歴史総合からの出題となります。両者とも、科目名が日本史探求・世界史探求と変わり、より思考力を必要とするという趣旨なんですが、この大問構成を見る限り出題範囲や構成はあまり変わらないのかなと思います。
地理総合、地理探求の問題構成はこちら。こちらは、第1問・第2問が地理総合からの出題で、残り第3~6問が地理探求からの出題です。地理総合の出題範囲は、幅広い範囲から、そしてやはり思考力であったり、一般常識的な所をベースにした出題なのかなといった印象です。
つづいて、公共、倫理と公共、政治・経済の構成です。左側の公共、倫理は第1問・第2問が公共からの出題になっていて、第3~6問が倫理からの出題になっています。右側の公共、政治・経済は、同様に第1問・第2問が公共からの出題で、第3~6問が政治・経済からの出題になっています。
最後に、地理総合・歴史総合・公共の基礎科目3つから2科目を選ぶ場合の出題構成です。
また、既卒生や高卒生に対する経過措置ですが、基本的には旧課程の方を選んで良いと思います。ただ、1つだけ気になるのは、もともと倫理政経を選択していた場合です。もしかすると、新課程を選択する方が負担が少なくなり有利になる可能性がありますので、その点については要検討です。
対策としては、文系志望者で2次試験や一般試験に必要な科目であれば特別な対策は必要ありませんが、理系志望者で共通テストのみであれば、夏休みくらいからできれば対策を始めていくことをお勧めします。
情報は、出題構成としては以下のように予定されています。おそらく、後半部分のプログラムや、データの活用といわれるところあたりがカギになってくるのかなと思います。そして、情報という科目の対策にどれほど力を入れるかは、自分が志望している大学・学部の配点をまずチェックすることをお勧めします。例えば東京大学であれば、科類問わず一律100点、素点のまま採用ということらしいのですが、各国公大学・学部によってかなり異なりますし、東大のように100点の素点そのまま採用する大学は割と少ないです。
もう1つ気になるのは、新課程の情報Ⅰと旧課程の情報とどちらを選択するのか、もちろんこれは、高卒生・既卒生だけが悩むところではあるのですが、情報Ⅰと旧情報の大問構成を比べると以下のようになります。そもそも旧情報は、旧課程の社会と情報+情報の科学から構成されています。ただし、御覧の通り選択問題が多いので実質、前半の社会と情報からの出題、選択で解答することが可能です。プログラミングは、後半の情報の科学からの出題になりますので、それを避けて解くことができます。
対策としては、情報Ⅰ、新課程の方は、予備校の模試でもテストを受けられますし、過去問としては、いわゆる情報関係基礎という旧課程の過去問がありますので、そちらを活用することも可能です。また、各出版社から参考書や問題集が出版されていますので、こちらを活用するのも良いと思います。
一方、旧課程の方は、古い教科書を取ってあるということであれば、それを読んで勉強するのでも良いですし、他に例えば、新課程情報Ⅰの参考書などを用意して、1章・2章を中心に勉強して、あとは先ほどの旧課程情報関係基礎の過去問などを解くというのもありです。
科目別の変更点および経過措置、そして対策について書いてきました。
最後に2025年度の大学入学共通テスト時間割について出しています。大きな変更点としては、2日目の理科が理科基礎と同じ時間に繰り上がって、そこにあった最終時間割に情報が追加されるというところです。また、試験時間が少しずつ伸びているので、全体としても試験時間が延長されているということになります。
また、これから始まる模擬試験、共通テスト模試についてですが、学校実施を除けばほとんどが1日での実施になると思います。国公立志望者であれば1日9科目なんてことになりますので、集中力の維持がこれから課題になってくると思います。休み時間にしっかり休むこと、そして長丁場に慣れていくことも重要です。もし体力・集中力に自信がない場合は、オンラインでの受験、あるいは、在宅受験も上手く取り入れていくと良いでしょう。
*こちらの内容は次の動画でも詳しく解説しています。