2025年度共通テスト変更点(その2「数学」)
2025年度(現中3生受験時)から指導要領改訂に伴い共通テストの科目割が変更になる件について、第2弾は数学です。
まず現行の数Ⅰ・数A・数Ⅱ・数B・数Ⅲに加えて数Cが復活します。数Ⅲは主に「極限」「微分」「積分」がそのまま残り、「式と曲線」と「複素数平面」が数Cに移り(あわせて「平面上の曲線と複素数平面」という一つの単元にまとめられ)、さらに数Bから「ベクトル」が数Cに移行します。一方、数Bは従来からの「数列」と「統計」(実質これまでは選択)が残りますが、「統計」が「統計的な推測」とボリュームアップする印象です。
現行 | 新指導要領 | 補足 | |
数Ⅰ | 数と式、2次関数、図形と計量、データの分析 | 数と式、2次関数、図形と計量、データの分析 | 「データと分析」に仮説検定の考え方が追加 |
数A | 場合の数と確率、整数、図形の性質 | 図形の性質、場合の数と確率、数学と人間の活動(整数を含む) | 単元として整数単独はなくなる、「確率」に期待値が復活、また頻度確率が追加 |
数Ⅱ | いろいろな式、図形と方程式、三角関数、指数関数・対数関数、微積分 | いろいろな式、図形と方程式、三角関数、指数関数・対数関数、微積分 | |
数B | 数列、ベクトル、確率分布と統計的な推測 | 数列、統計的な推測、(数学と社会生活) | ( )内は実質不要 |
数C | なし | ベクトル、平面上の曲線と複素数平面、(数学的な表現の工夫) | ( )内は実質不要 |
数Ⅲ | 極限、微分、積分、式と曲線、複素数平面 | 極限、微分、積分 |
さて、先に共通テストでの割り振りや実際に学校でどのように履修するのかを整理してみます。
<共通テスト>
①「数学Ⅰ」あるいは「数学Ⅰ、数学A」の選択 *これは従来通り
②「数学Ⅱ、数学B、数学C」*数Ⅱはこれまでとほぼ同じ *数B2項目と数C2項目の合計4項目から3項目を選択
現在は、数Bの3項目から2項目を選択(多数は数列とベクトルを選択)ですが、変更後は3項目の選択なので負担が増えることになりそうです。*「数列」「統計的な推測」「ベクトル」「平面上の曲線と複素数平面」から3つ選択
ここからは不確定要素が多く推測も入りますが、文系志望者も共通テストのためにおそらく数Cを履修することになります。これまでは「数列」と「ベクトル」の2つだけでよかったのが、もう一つ選択することになります。文系志望の場合は、過半数が「統計的な推測」を選ぶことになりそうです。ちなみに数Ⅰの「データの分析」も同じくボリュームアップするようで、その流れで「統計的な推測」も学ぶことになりそうです。一方、理系志望者の場合は、数Bと数Cの4項目すべて履修した上で、3項目を選択することになり、共通テストでは得意な項目を好きに選べるようになります。明らかな負担増となるのは“統計系”くらいだと思います。
今年の共通テストでは数学が大幅に難化しました。問題文が長くなったり、日常生活やコンピュータに関連付けて出題する傾向が増していますが、その流れは続きそうです。また「データの分析」や「統計的な推測」などデータや統計を扱う単元が重視され比重が増していく方向であることが伺えます。
一方、懸念されているのが、「ベクトル」の学習が遅れてしまい、数学の他単元や物理の学習に支障をきたすのではないかという点。「図形と方程式」や「運動方程式」(特に後者)では「ベクトル」の知識がないと厳しいと思うのは私だけではないと思います。学校によってはカリキュラムを入れ替えて、「ベクトル」を実質数Bのタイミングで早めに学習させるようにすることも想定されます。
以上、仮定の話を含めて説明しましたが、その仮定というのは文系志望者、特に国公立大文系の場合、共通テストで「数学Ⅱ、数学B、数学C」が必須になるため、数Cを少なくとも一部学習しなければならないということです。これは大学側の個別試験とのからみも今後出てくるので、まだまだ予断を許さない部分だと思います。ご承知置きください。